Scientific American

機内ではSciAmも読みました。この中では肥満に関する記事が興味深いものでした。「肥満によって、アメリカの平均寿命が2-5年縮む」ということを言った研究者がいたために、それをマスコミが一気にとりあげて、マスコミらしくいろいろな前提を省略して「心臓にも悪い、糖尿病にもなる、がんにもなる」と言っている。そのためかどうかアメリカの75%の人はやせるか体重を維持するかするためになんらかの行動を取っている。

ところが、この2-5年というのには実はたいした根拠がなかった。肥満の人が人口に占める割合が上昇したのは確かだが、糖尿病の患者はそれに伴うほどは増えていない。前立腺がんの相関性は認められたが、肺がんとは負の相関があるようにも見える。糖尿病(type 2の糖尿病と書いてありましたが)と肥満に相関はあるが、糖尿病の治療薬にしばしば肥満を導く副作用があるので、原因と結果は明らかではない。

肥満の危険を訴える研究者は、しばしばダイエット産業から研究資金をもらっている。ダイエット産業は460億ドル(5兆円くらい)の産業である。

というようなことがもっと詳しく書いてありました。

以前からアメリカ人の平均寿命は日本人と結局のところそれほど大きく違わないところが気になっていました。それは、国民の中に「保険?なにそれ」というような層があって、病気になっても悪化して手遅れになるまで病院にいかないという人がいたり、事件や事故で死亡する人が多い、ということを含めた数字です。つまり「実は平均程度の生活をしているアメリカ人と、平均程度の生活をしている日本人を連れてきて比べたら、そのアメリカ人のほうが長生きしそうなのではないか」という疑念は昔からあったわけです。

というわけで、肥満の危険が過大評価されていたという意見にはうなずけるものがあります。逆に、無理に痩せることが決して体に良いわけではないとも言えます。階段を登るだけでふうふう言ったりするのはかっこ悪いのだと思いますが、無理に痩せなくても良い、ということを言うほうがよさそうです。

Low Carb Dietも、カロリーを同じだけ取れば同じ程度の効果であるという実験結果もあるのですが、狂牛病で危機感を抱いた食肉業界がはやらせた、という説もあるにはあります。真偽のほどは知りませんが。