変な議論

最近はブログ界ニセ科学論がはやっているそうですが、私もなぜかフリーエネルギーエンジンを一緒に作ろうじゃないか、という人としばらくメールのやり取りをする羽目になっていました。というかなんで俺が相対論やトンネル型走査電子顕微鏡の説明をしたりしなくちゃいけないのだ。しかも英語で。まあ日頃からkikulogを読んでいるので、「科学とは新規な説を主張する側がそれを証明する責務があるのであって、伝統の側には新奇な説を否定する義務はない」ということを3回くらい繰り返したら「こいつとは一緒にはできないな」と思ってもらえたようで、ようやく静かになってくれましたが。

「新奇な説」といっても、「相ま」の人のアイディアというのはそこまでバリエーションはないようなので、「ああ、その手か」と思うわけで、説明を読めば昔読んだ本やウェブサイトや新たに検索したウェブサイトから指摘方法はわかるわけではあります。まあいくら指摘しても納得はしてもらえないのですけどね。

もちろん、いくつか勉強になったこともあります。「マイケルソン・モーリーの実験がエーテルを見つけることができなかったのは実験器具がエーテルの絶対静止系に対して移動していてローレンツ短縮していたからだ」という説に対しては、マイケルソン・モーリーの結果だけを使っては否定できないとか。だから、エーテルがあるんだという人に対して、「マイケルソン・モーリーの実験があったじゃん」というだけでは否定できないのですね(もちろん、そんなことで短縮してしまうのなら、作るときに誤差なしで作ることができないのでは、とは言えますが)。

あとは、Papp Engineが本物だったと思っている人が結構世の中たくさんいるということです。ご冗談でしょうファインマンさんを読んだ人なら知っていると思いますが、ファインマンが学生に連れられてJoseph Pappという発明家の永久機関を見に行き、測定器につながっているコードが怪しいなとにらんでいたところ、Papp氏がコードを抜いて「これは測定器につながっているだけで電源供給しているわけではありませんよ。ほら、まだエンジンは動いているでしょう」といったので、「ああ、じゃあそのコードをちょっと見せてください」といってしばらく持っていたらPapp氏が身もだえしてうろうろしはじめ、コードを返してやったらあわてて接続しなおしたしばらくあとでエンジンごと爆発してしまって死人もでたというクラシックなやつがPapp Engineです。今でも、それを元にした新しいエンジンを作ったと称する「エンジニア」がたくさんいて、実は内部で常温核融合が起こっていたのだ、とかエネルギーをエーテルから取り出していたのだとか言っているのですね。こちらも新しいねたは案外少ないのかもしれません(詳しくは知りませんが)。