Apple Hillコンサート

というわけで、行ってきました、コンサート。記憶で書いて200人くらい集められると書きましたが、行っていたら100人強でしたな、おやおや。

最初はモーツァルト、次はドホナーニ(初めて聞く作曲家でしたが)、そして3番目は若いビオラ奏者のMichael Kelley氏による"Dinny's Suite"というもの、そして最後にドヴォルザーク、というような構成でした。

日記に書くのはやっぱり3番目のやつが面白いと思うので、書いておきましょう。Apple Hillは音楽を通じた平和活動、という面にも力を入れていて、なんでも敵対する地域のそれぞれから若い演奏家を呼んできて、Apple Hillで一緒に合宿させたり、あるいは自ら危険な地帯にも出向いていって、無料でコンサートを開いたり、ということをしているそうです。

今日演奏されたのはアイルランドに行ったときのために作曲したもので、アイルランドの風景と表した葉書のような曲にしたかったそうです。というような説明をちらっとだけ先に聞いてから曲の演奏が始まったわけなのですが、これがやっぱり導入部のところがいかにもアイルランドっぽいんですよ。どういうわけだか。それでだんだん別の主題に変わっていったりして、音楽というのは面白いものであるなあと思った次第でした。

コンサートの後はすこしだべっていたわけですが、Alanお気に入りのパイプオルガンについていつもよりいろいろ聞けました。ディドロの百科全書は大体全150部くらいあるそうですが、その中の2冊はオルガンに割かれていて、当時の基準での古今東西のオルガンについて、どういう仕組みになっていて、誰がどういう部品を使って作って、ということがみっちりと書いてあります。なんで「書いてあります」と言えるかというと、Alanは限定復刻されたその二冊をちゃんと持っていて、ひょいっとクローゼットから出してきたりするからなのです。巨大な本で、限定1000部だけ作られたそうですが、その1000部を予約した人の名前が全部リストとして載っていたりするという驚異的な本でした。

パイプの配列はどうなっている、パイプの組を選ぶためのレバー(?)を引くと何が起こるか、とか、要するにプロのオルガン作者と一緒に何年もかけてデザインしたので「たなごころを指すように」知っているわけです。釘なども含めて現代の技術で作られた部品は一切使いたくなかったので、手で打って作ったものを使ったわけなのですが、ありとあらゆる部品を作るには鉄を熱したときのオレンジの色合いを30通りくらい見分けて、適切なオレンジ色のときに適切な道具でたたいて作らないと良いものにならないとかで、馬の蹄鉄を作っている人を捕まえて訓練させて作ってもらった由。

動いているところを見ながら説明を聞くと、パイプオルガンというのはそれだけで一個の「宇宙」というかネットワークというかそういうものを作っているのだなあということがひしひしと伝わりました。

正面から見ると、飾りとしていろいろと浮き彫りがなされているのですが、それが実は「たんなる飾りではない」のです。これの秘密は墓場まで持っていくつもりのようなので、もういやはや。