愛・地球博

京都から愛知EXPOに来た。といっても観光ではない(本当だ)。愛知EXPOのスペイン館では今週をExtremadura州週間と位置づけて、州の宣伝をしたり人を呼んだりする企画をいろいろやっている。このExtremadura州週間の一環として金曜日にLinExとSqueakを取り上げたプレゼンテーションが行われるため、それをサポートするべく阿部さん山宮さんと一緒に今日のイベントにあらかじめ顔を出した次第である。

今日のイベントは州全体のプレゼンテーションで、日本の背広組の人々を対象とし、州に対する投資や貿易や観光や産業を誘致しようというものだった。ホセ・イグナシオ・サンチェス・アモール州副知事をはじめ、Extremaduraの大物達が、入れ替わり立ち代りちょっとした紹介をする。スペイン平均71人/km^2の人口密度に対して27人/km^2であるとか、マドリッドリスボンセビリアの間にあるので有利とか、賃金平均が低いとか、水が豊富とか、すでにある産業用地をつぶすコストが必要ないとか、そういう点を挙げて宣伝しているわけである。なんとなく良いことのようにも言っているが、裏から見れば、EU圏内で5番目くらいにGDP per capitaが低い地域である、ということを如実に表しているとも言える。

ただ、食物貿易や観光以外に、LinExプロジェクトを中心としたITもExtremaduraのコアとして重要な位置を占めている。昔の日記にも書いたように、LinExとはExtremadura製Linuxディストリビューションで、すぐに使える環境を簡単にインストールすることを目標にしたものである。Extremaduraは州内の高校生2人あたり1台のコンピュータをすでに導入済みだが、州政府にはお金があまりないので、ハード以外は自前で全部やっているのが強みである。LinExはかなり注目されていて、スペイン内のアンダルシア地方のほかにも、アルゼンチン、ホンジュラス(だったと思う)などなど、各地に展開されている。

で、なぜ我々なのか、と言うことだが、それはLinExにSqueakがアプリケーションとして入っているからである。僕の友人でもあるアルゼンチン生まれのDiego Gomez Deckが中心となって、eToysだけにとどまらないオーサリング環境としてかなりカスタマイズしたSqueakを作りそれをディストリビューションに入れている。僕自身は他の同僚と共にExtremaduraまで行き、Camp Squeak in Extremaduraをしたりしたこともあるので、向こうの人も覚えていてくれて、イベントの手伝いを要請して来てくれたわけだ。

ExtremaduraにはAlanも言って講演し、州の教育相(政治の世界に入る前は生物学者だった)と意気投合までしたりするような感じだし、なにしろ何万台という規模でインストールされているものなので、SqueakとExtremaduraの結びつきは強いわけである。

Extremadura州謹製の説明ビデオでは、トレミックスなるピンク色の70年代キャラがExtremaduraのITについて説明する。面白い。

沖データは、Extremaduraにプリンタを納入し、LinExで使えるようにドライバも書いて提供したとか。お近づきになりたいが、今日はタイミングを逸してしまった。

セミナー」と呼ばれていたプレゼンテーションの後は、カクテルパーティーがあったのだが、我々は金曜日のイベントのために、裏の部屋に入って用意されたコンピュータに日本語版のSqueakをしこしこインストールしていたりしたのであった。それでも「世界一」を名乗るExtremaduraのハムはたっぷりとつまませてもらいましたが。

インストール作業が終わった後は、スペイン館の中を案内してもらいました。セビリアで開かれる今度のEXPO(あるいは以前のやつという話だったのかな?)で日本が大々的なパビリオンを建てるので、今回もスペインはアメリカよりもどこよりも贅を凝らしたパビリオンを作っていた。案内してくれたスペイン人のお兄さんも面白い人だったし。奇祭(たくさんあるようだ)のビデオ映像、火星探査ロボットの縮小レプリカ(ちゃんと歩いたりする)、農産物の拡大模型などなど。

今日のお役目は大体この辺で終わりで、あとは阿部さん山宮さんと共に万博会場をちょっとだけ巡った。メジャーなパビリオンにはなかなか入れなかったが、アルメニア館に入り、味噌カツ丼を食べ、ゴンドラに乗って、シヤチハタ館に入った後、阿部さんの強い希望により、押井守プロデュースの「めざめの方舟」なる映像作品を見た。おそらく自分は「水」の視点になっていて、水の循環サイクルをスクリーンやギミックに囲まれた劇場の中で経験しつつ、押井だけに鳥や魚と触れ合って飛翔感を感じ、最後には水を象徴したように見える女神とであって終わる、というストーリーではなかっただろうか。山宮さんは「寝てしまった」と言って、最後の水の女神が動きを見逃してしまったようである。腕や足を縦横に繊細に使った舞を見せていたのだが。

瀬戸会場に行くほうのモリゾーゴンドラは、途中で窓が曇りガラスになって近隣住民のプライバシーを守るようになっている。中からは見えないが外からは丸見え、という状況だったら面白いなあと思ったり。

その他外国館にもいくつか入ったが、頑張りが足りないものも多かったような気はする。トヨタ館や日立館などメジャーどころに行かないと行った事にはならんかもな。