UCLAの講義

今日も京大側はお休みなのでUCLAだけ。今日は学生のアイディアを聞こうという趣旨なのでAlanはなるべくしゃべらないようにしてKimに主導権を渡し、学生同士に議論してもらった。学生さんもみんな良く発言してくれたが、Alanを見ていると時々割り込んで話そうとするのを必死にこらえている様子が良く見て取れて面白かった。後で「社交の場みたい」と言っていたので、まあやっぱり必死に我慢していたわけである(つってもだいぶしゃべってたけどね)。

Squeakがらみでは、Rocky's Bootsのような回路シミュレーション、毛玉を使ったArtificial Lifeの例など。その他、動機付けの方法、学習環境などなどいろいろなことに興味を持っている学生がいた。

Alanのコメントで主なものを以下にあげる。

  • Rocky's Bootsの作者は、AtariAlanの部下だった。似たようなゲームで、ロボットの動作を記述してゴールを満たし次のレベルに行く、と言うゲームを作ったが、他の人の書いた記述を読んでも何をするものなのか理解しづらかった。おそらくはそれが理由のひとつで成功しなかった。
  • 良くできたALを作っておいて子供に見せても、子供が理解するわけではない。
  • Newtonの運動法則もそうだが、法則を宗教のように信じさせてはいけない。
  • 7歳ごろになると、世界に関するいろいろな子供なりの法則を持つようになる。だいたいそれらは科学的には間違っているものが多いので、科学を学ぶためにはそれらの獲得されたものを一度取り消す("undone")必要があるが、心理学的に言えば、「あなたが信じていることは間違いだぞ」というのは子供にとってはつらいところもある。
  • 好奇心は皆が持っているわけではないし、危険なものでもある。犯罪者の平均生涯獲得を平均すると4千ドルから5千ドル程度でとても割に合うものではないが、多くの犯罪者はお金以外の要因(スリルを得るためとか)のために繰り返す。
  • 使用者が何にどのくらい興味を示しているかを推定しながら動くUIが作られていない。虹彩の正常時直径を調べておけば、それからのずれでかなり良く興味度が推定できる。30年前は大変な技術だったが、今は簡単にできるはずだ。
  • 一般教養は一見ぜんぜん相容れない異なる教科をそれぞれそれなりに深く学ばせて、深く行ったときに見えてくる共通項や異なる視点を得るのがその意義である。
  • いろいろな教育論がある。問題はどの教育論も一部の子供には効果が見られることである。Exploratoriumのように、ひとつのことを教えるための教材を何百も用意し、子供がそのなかから選ぶようにする必要がある。Montessoriの方法でも、子供が自分が遊ぶおもちゃを選ぶが、一度遊んだおもちゃはその日はもう選んではいけないことになっている。
  • E-Inkの次の世代のものはアニメーションをするのに十分応答速度を持つようになると開発者が言っている。

などなど。帰り道でスポーツの話になったとき、「そういえば昨日のイチローのやつを見たかい」と言っていた。彼はいったいいつの間にTVを見ているんだろうか。

ALを考えている学生のお父さんは、PARCでAlanの同僚だったそうである。PDP-10クローンを作ることができたのは彼のおかげで、歴史上最高のマイクロコード書きの一人である、というAlanの評価だった。