OLPCに対するよくある誤解。
- 導入する各国政府は少なくとも原価分は負担するので、先進国がまるまるチャリティーとして後進国に配るわけではありません。「きれいな水や予防接種を与えるべきで、コンピュータなぞを与えても無駄になる」という意見は、「先進国以外の国々はどこも不潔で今にも死にそうな子供達ばっかりである」という考えにでも基づいているのでしょうか。最貧国ではないけど次の発展を目指すという国が数百億円を投資しようと思う場合、最貧国の衛生向上のために援助するよりは自分の国の教育に使いたくなるでしょう。
- 「デジタルディバイドの改善」というのは決してOLPCの人が高々と掲げている目標ではありません。子供がインターネット上の雑多なごみのような情報に触れられるようになったところで、それがいったいどれだけの教育効果を持つのかは僕にも不明です。
- 紙と鉛筆のほうが良い。というのは一理あるとは思うのですが、教科書の代わりをさせるということには経済的利点はあります。80GBとかのディスクには普通の本のページが(1ページ10kくらいとすれば)800万ページくらい入ります。iPodのことを考えればわかりますが、これは800万ページ分の教科書を数百ドルで配れる可能性があるということなのですよね。紙の教科書を配る代わりに、多くの人が使っているコンピュータよりも高解像度のディスプレイ付きで、雨にも負けない電子機器を使ってもらう、ということには経済的利点はあると思います。メディアとしてのホットさ、クールさということで言えば、紙の本の方がホットで、電子ブックのほうがクールということにはなってしまう気はしますが、電子ブックに慣れてもらう、つまり電子ブックのメディアとしてのメッセージを受け取れるようになってもらうことにはなるでしょう。
- 開発環境。全部Squeakにすればよかったのに、という夢もありましたが、現実的にはまあXとかLinuxとか(Pythonとか)は使わざるを得ないわけでした。が、Cコンパイラなどが載せられるわけではないので、全部が変えられるようにはなりません。Pythonインタープリタを起動してプログラムを走られされるようにはなると思いますが。やはり主なターゲットは教育であってプログラマーを育成するためのものではないのです。
- コストが100ドルかどうかはあまり本質的ではないでしょう。電子機器の値段というものはどんどん下がりますし、台数が多ければなおさらです。最初のバージョンは150ドル程度になるとかいろいろうわさはありますが、いずれどんどん安くなるでしょうし。Mary Louのがんばりでなかなかすごいディスプレイができてしまったわけですが、e-inkベースのものに切り替えていけばもっと安くなっていきます。先進国で高めに売って、利益を援助にまわせばよいというのはそのとおりなのですが、100ドルとか150ドルとか言っているのはコストであって、小売の値段ではないことに注意してください。先進国で売られている商品は、コストの3倍や4倍とかの値段で売られているのが普通なので(もっとかもしれませんが)、結局は500ドルとかの値段で売らないと、援助できるだけの資金はできてきません。が、500ドル出して非力なコンピュータを買うという人が本当に100万人単位でいるかどうかはやや僕には不明です。(世界のラップトップ市場は、今のところ年間4000万台とかと言われていますので、その5%程度の以上の人が買わないと一国分にもならないです。)