C5 2010

id:propellaさん同様、僕もUCSDのCalit2で開かれたC5 2010に参加してきました。今回は本当に単なる参加ですが。

初日の基調講演はLarry Smarrで、"4K"プロジェクタ(もう5年も前のテクノロジーだと何度も言っていたが、8メガピクセルのプロジェクタ)用の、非圧縮リアルタイム画像データ送信テクノロジーを核とする映像技術について。1989年ごろからtelepresenseの研究をしているわけでもあるし、そもそもInternet発祥のころからの研究者なので、歴史を振り返る話が興味深い。

8メガピクセルでもたとえば24fpsであれば、完全非圧縮でも500Mbps程度に収まるので、今でさえ太平洋を越えてもGbpsでデータが送れるし、将来もbandwidthの指数関数的な向上が見込まれるわけなので、動画圧縮方法の研究などには未来がないと言ってしまう所がなかなかであった。同僚Dはかなり懐疑的で、そういう単純な主張をしても、人口の大部分にそういうバンド幅を提供できるようになるまでにはだいぶんかかるのだから、圧縮技術を無駄扱いするのはひどいということを言っていたが、FTTHが当たり前になりつつある国もあり、各家庭にスペクトル拡散でデータが送られるようにでもなれば、国によっては案外もうすぐそういうことが当たり前になるのかもしれん。

二日目の基調講演はVernor Vinge。SDSUの教授は引退したのでどうやら時間は自由になるのか、初日から大分うろうろしていたので、休憩のときやレセプションのときなどに大分話をすることができた(例によってミーハーでRainbows Endの英語版と日本語版にサインしてもらいました)。「小説を書いていると、キャラクタが思わずへんなことを言ってしまうことがある。そういうときには、その段落を書き直すこともできるが、なんでそんな変なことを言ったのだろうと考えてみると、自分でも思わぬ展開になることがある」とか。Rainbows EndはAugmented RealityやSensor Networkを扱った話で、「Stand Alone Complexは知っているか」と聞かれたり(DVD全部持っていると言ってしまった)、「電脳コイルというのがかなりしっかりとしているらしいんだけど、まだ入手できていないんだよね」といわれたりした。僕はアニメ会には疎くなっているので、そもそも電脳コイルという作品は知らなかったし。ただ、残念ながらというべきか基調講演はやや観念的な未来予測に終わったというか、将来のネットワーク社会で人々のコミュニティの概念がどう変わっていくかということを軽く触っただけに終わっていたように思われた。発表資料はこちら(http://www-rohan.sdsu.edu/faculty/vinge/C5/index.htm)です。

Calit2のツアーは面白いといえば面白いのですが、ちょっと評価は分かれるという面もあります。力ずくで300メガピクセルのディスプレイを作りましたというところでも、じゃあ静止画を拡大して見せるだけで(Larryは天文学のバックグラウンドがあるので、りゅうこつ座イータの近傍の説明などは面白いですし迫力はもちろんありますが)、脳のスキャン写真の説明をされても「別に300メガピクセルいらないじゃん」という感想もありえます。NASA Amesにも導入してやっていますが、そちらにある大画面の絵をHDビデオカメラで撮影して、それをフィードしてこちら側に表示するという運用にとどまっているようで、まだまだソフトウェアはがんばる余地があります(というのは良いニュースかもしれませんが)。

民生向けのフラットパネルで3次元表示できるもので小規模なCaveを作ったりもしています。めがねを重ねても黒くならないぞと山宮さんが発見していましたが、今思うとhttp://itsa.blog.so-net.ne.jp/2010-01-15にあったような、3原色に異なる波長帯域を用いるという方式だったのかしらんと今は思います。

そういえば、La Jollaで「これはうまい」と気に入っていた、Prospect Plazaというところの2階にあったはずのイタリアンレストランが消滅していました。諸行無常