ライセンス

SqueakチームがAppleを離れるときに急いで作ったSqueak Licenseは、Open Sourceという言葉が一般化する前でもあって、その後"Open Source"という言葉を定義したりする動きができたときに、その定義と食い違う面がありました。精神的な面はほぼ共通なわけですが、ライセンスに書かれていたいくつかの条件が、"Open Source"という言葉を後から定義した人の気に入らなかったわけです。そのため、もともと"open source"だったのに、"Open Source"ではないことになってしまっていました。

一度言葉が定義されるとそれが気になるのは人情というものなので、「SqueakはOpen Sourceではない、」という部分を問題視する人が時々出てきていてコミュニティとしても少し問題になっていました。そこで、できるならOSI認定のオープンソースなライセンスに乗り換えたい、というのがコミュニティの一部の人の悲願でした。

Viewpointsも、CroquetやTweakなどのようにSqueakに(今のところ)依存しているプロジェクトがあるので、Squeak Licenseでないものに乗り換えておくことには戦略的意味があったわけです。僕自身も、Viewpoints側での議論に参加したり、Appleの一番偉い人S.J.さんとViewpointsの人の電話を小耳に挟んだりしたこともありましたが、なにはともあれいろいろな人々の努力によって、ついにApple時代に公開されたSqueak1.1のライセンスをApple Public Source License (APSL) 2.0に変更することに相成りました。APSL 2.0はOSI認定の"Open Source" Licenseなので、これからは胸を張って「Squeak (1.1)はOpen Sourceです。」と言えるようになります。

http://lists.squeakfoundation.org/pipermail/squeak-dev/2006-May/104466.html

とはいうものの、その後10年間に書かれたコードはSqueak Licenseだったり他のライセンスだったりにカバーされているので、これからまだ紆余曲折はありそうですが。

昔の日記にも書きましたが、仮にソフトウェアのライセンスが「誰でも自由に配布してよい」と言っていたとしても、米国からキューバ北朝鮮にそのソフトウェアを販売した場合、米国政府から罪に問われる可能性はあります。「ライセンスが良いといっているんだ」といっても余り意味はありません。Appleとしては、自社から公開したソフトウェアがそのような問題になることを避けたかったわけですが、それがOpen Source Initiativeの定義に合致しなかったわけです。まだ確たる判例がない以上、本来は誰も何も決定的なことはいえないわけであります。

Squeak Licenseの本当の問題は「あなたがコントロールしているコンピュータに自由にインストールしてよい」という部分だったと内心思っていたのですが、こちらは余り問題視されていなかったですね。インストーラを作って配布していたのがどういう扱いになるのか本当は疑問ではありますが。